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牧場物語 キミと育つ島 プレイ記録

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2024 
May 19
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2007 
February 26
 いつものように動物屋に入ると、いつもはいないもう一人の人影が見えた。
 あの赤い髪はエリクだ。
 三人はマルクに気がつかないかのように、やり残していた仕事について話している。
 どうやらエリクはそれを手伝いにきたらしい。
 初めはジュリアも断っていたものの、最後には笑顔で承諾した。
 それがいつも見せるものとは少しだけ違った。
 その意味に気がついたのはマルクだけで。
「あら、マルク」
 ジュリアが名前を呼んだ。
 マルクはなにも言えなくて、彼女から逃げるように目をそらした。
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2007 
February 21

 目が覚めるとそこは自分の家だった。
 都会の、ではない。
 この島の赤い屋根の家だ。
 とっさに自分の家だと認識するほど、なじみになってきたことにマルクは苦笑した。
 起き上がると体が軽くなっていることに気がつく。
 そういえば、昨日の記憶はぷっつりと切れたままだった。
「目が覚めたなの?」
 途切れる前に聞こえた声と同じ声がした。
 マルクが声をしたほうへ向くが、誰もいない。
「こっちなのー」
 もう一度聞こえた。
 下からだ。
 視線を落とすとベッドより低い位置にノーイがいた。
 記憶が戻ってくる。
「そうだ、俺」
 マルクが呟く。
「腹がへって……」
 お腹の虫が鳴った。

 時間を確認するとまだ六時にもなってなかった。
 ノーイが用意してくれた食事を口に運ぶ。
 食器はノーイが持参してくれたもので、人間の半分サイズしかない。
 それでもまともな食事を取るのはひさしぶりで、素直においしいと思える食事だった。
「マルクは頑張りすぎなの」
「そういう問題じゃない。食べ物がないのが原因だ」
 事実マルクが食べているものといえば木の実がほとんどだ。
 ノーイは少し考えてから。
「鶏や牛を飼えばいいの」
「飼い葉がないよ」
「川に魚がいるなの」
「釣竿がないよ」
「マルクはなんにももってないのー」
「仕方ないだろ。船が難破したせいで荷物はほとんど持ってないし。財布の中身もお札は全部濡れて破けて使えそうにもないし」
 マルクは最後の一口を食べる。
「ゼロからって、難しいな……」
 ノーイには聞こえないよう、ぽつりと呟いた。

なぜ空腹が半分だけ回復するのかについての考察。

2007 
February 19

 あたし夜って好きなのよ。
 そうジュリアは笑って言った。
「なんで?」
 マルクは聞き返す。
「んーほら、なんだか神秘的じゃない?」
 マルクはあたりを見る。
 今はもともと空き家だった場所にそれぞれみんなが住み着いて、その明かりのせいで完全な闇ではない。
 ほんの少し前までは空の月明かりだけだったのだと思うと、少しだけ不思議な感じがした。
「少し歩こうか」
 マルク声は出さないでただ頷いた。

 少し歩くとまた別の集落がある。
 こちらのほうはまだほとんど誰も住み着いてない。
 さきほど想像した、夜の世界とひどく似ていた。
 虫やカエルの鳴く声が聞こえる。
 しんと静まり返った空き地にジュリアは横になった。
「ねえみえる?」
 ジュリアは上をみたまま。
 マルクも空を見上げる。
 そこに見えるのはたくさんの星。
「ひさしぶりだよね。晴れた夜なんて」
 まだ湿り気を帯びている地面を靴のそこで叩きながらマルクは言う。
「服、よごれるよ」
「どうせ洗濯するわよ」
 マルクはなにか言おうとしたが、あるものをみつけたような気がして、また上をみた。
「どうしたの?」
「いや、流れ星」
「ああ」
「願い事でもしないの?」
「たくさんしたよ」
 怪訝そうなマルクの顔を見て、ジュリアは笑う。
「流れ星って、めずらしくないんだよ。数分に一回は流れてる。ただ都会では明るすぎて見られないだけ」
 マルクは黙っていたが、しばらくするとジュリアの横に座った。
「服よごれるんじゃないの?」
「知るもんか」
 そして二人で空を眺める。

2007 
February 18
「………ここの島にいて幸せか?」
 その問いにマルクはすぐに答えられなかった。
「…いや、ふと疑問に思ってな…」
 ヴァルツはそういうと口を閉じた。
 そう言った彼の横顔は無表情で、なにを考えているのか分からない。
 マルクの頭の中では、先ほどの問いが繰り返された。
 ずいぶんと時間が経ってしまった後で、マルクは答えた。
 ヴァルツはなにもしゃべらないまま、まだ隣にいた。
「まだわからない」
 マルクは言う。
「まだ始まったばかりじゃないか」
2007 
February 09
 波の音が聞こえる。
 その中に紛れていたはずの足音にナタリーは気づけなくて、振り返るといつのまにかマルクがそこにいた。
「どうしたんだ?」
「ナタリーこそ」
 そう言ってマルクはナタリーのとなりに腰を下ろす。
 さらさらと、地面が少しくずれた。
 長い間、マルクはなにも言わず、海をみつめている。
「おとといさ、初めてカブが取れたんだ」
 一瞬、それがさきほどの問いの答えだと気がつかず、ナタリーはそのまま黙り込む。
「まだ俺効率悪いから、全部収穫できなくて。今ようやく終わった」
「それがマルクの海に来た理由か?」
 マルクは笑う。
 いつものボーっとしたような表情とは、違う顔。
「……本当はこんな無人島でなにができるんだって思ってたんだよ。だから今回のカブで、思った以上にやれそうな気がして素直にうれしかったんだ。そんな時、ナタリーが海に向かってるのがみえた」
 そこで彼はいったん言葉を置いた。
「ナタリーは海、好きなの?」
「……好きっていうよりは、不思議かな」
 そうしてマルクと話すうちに十時が過ぎる。
 あとで家族に怒られるんだろうなと、ナタリーは後悔しながらも、こんな夜も悪くないなとこっそり思った。
2007 
February 06
 トイフラワーの花を、手の平に落とされる。
 ナタリーはそれをみて、不思議そうな顔でマルクを見た。
「あげる」
 マルクはそれだけ言った。
 男性に花をもらうという経験のないナタリーはとまどったが、別に花は嫌いではないので、ありがとうと礼を言う。
「どうしたんだよ?」
「フェレナさんって、花嫌い?」
「いや、どちらかというと好きなほうだけど?」
 話によると小さな花束をつくって差し上げたらしい。
 しかしフェレナはたくさん頂いては悪いからという理由で、そのうちのいちりんだけを手に取り、他は断ったという。
 これはそれの残りものというわけだ。
 合点がいった。
「……マルク、人のウチの母親をくどくなよ」
「だあー! 声がでかい!」
「誰も聞いてないだろ、こんな無人島の中。とにかくこれはやっぱり返すよ」
「なんで?」
 マルクは聞き返すが、それには答えず仕事に戻った。
 つき返された花を片手に、牧場へとマルクは帰る。
 そんなマルクの後姿をちらりと振り返ってみて、ナタリーはやれやれと思った。

 朴念仁。
2007 
February 01

 闇の中、世界がゆれていた。
「どうする?」
 名前も顔も知らない隣人に声をかける。
 分かるのは声からの情報で、女性だということぐらいだ。
「とにかく、なんとかならねえの?」
 そう、彼女は言う。
 マルクはドアを押す――もとい、叩いたり蹴ったりしてみるが、それでもわずかな隙間が開くだけで人が通れるサイズにはほど遠い。
 ドアの向こうでつっかかっているなにか、たぶん花瓶台はちっとも動いてくれない。
 ぐらりと、足元が大きな揺れにすくわれる。
「ちょっとよけて」
 言われたとおりにすると、彼女はそのままドアを蹴り飛ばそうとした。
 しかし男の力でも突破できないそれが、やぶれるはずもない。
「……非常用の、ドア破りの棒みたいなのがあったはず」
「それをはやくいいなよ」
 窓の外に見えるのは、嵐で荒れ狂っている海。
 わずかな光がそこから差し込んではいるが、目が慣れることはない。
 ときどきフラッシュされるかみなりのせいかもしれない。
 二人は地道に暗闇の中、目的のものを探す。
「この船、沈むかな?」
 マルクがぽつりと言う。
「縁起の悪いこと言ってるんじゃないよ」
 彼女の声は思ったより遠くから聞こえた。
 声のするほうの見当をつけて、マルクはそちらに向かって言う。
「だって、本当のことじゃん。キミだって沈まないことを信じてないでしょ」
「なんでそう言いきれるのさ?」
「じゃなかったらここまで必死にならない」
「……見知らぬ男といっしょに暗い場所に閉じ込められたら、誰だって慌てると思うけれど」
 ため息のような音。
「あーもう。新天地求めて出発したのにこれじゃ先が思いやられるよ」
「家族は?」
「いるよ、この船のどこかに。海に投げ出されてないといいけど……」
 それっきり会話は終わる。
 時間の感覚がなくなってきたころに、マルクはようやくそれを見つけ出した。
 緊張していたせいか、のどがからからで声は出ない。
 出せたとしても、嵐の音で聞こえるほどの音量は出せなかっただろう。
 棒自体が壊れてしまうかと思えるほどに、強くドアを殴打する。
 ようやく通りぬけられるほどの隙間を空け、階段を駆け上がる。
 外に出た瞬間、体は滝に打たれたかのように雨にあたった。
 マルクはそこでようやく彼女を確認しようと振り向こうとする瞬間、
 光があたりをまばたき、かみなりが船に直撃した。
 船がバラバラに壊れる前、マルクは無意識に彼女の手を掴んだ。
 彼女も恐怖を手に収縮させるかのように強く握り返した。

 漂流した無人島で知り合った、同じ船に乗っていたらしい家族。
 自己紹介をし、握手をする。
 ナタリーの番になり、お互いの手が触れた時彼女は困惑したような表情をつくった。
 しかしすぐに思いなおしたように、笑顔になって、
「よろしくな、マルク」
 そして、手が離れた。

 そんなわけないかと思いなおして、
 お互いに知らないままだといい。

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